1984年に試料を採集した宮城県古川市の馬場壇A遺跡や、1985年3月にサンプリングを行った明石人骨出土地点の堆積残留磁化を測定し古地磁気学的研究を行った結果、双方とも、発掘調査露頭の下位の方に地磁気エクスカーションと思われる異常帯磁した層準が見い出された。馬場壇Aではフィッション・トラック年代や熱ルミネッセンス年代と考え合わせると、11万年前とされているブレイク・イベントに相当すると考えられる。また、明石では、発掘地点の【IV】層(海成シルト層)の中・下部が異常帯磁しており、ブレイク・イベントあるいはビワIイベント(17万年前)に相当すると思われる。いずれにしてもこれらは前期旧石器時代に相当することになり、日本列島の人類の起源が従来考えられていたものより、ずっと古い時代にまで遡ることの証明となった。 長野県岡谷市、茅野市および富士見町で行われた、糸魚川-静岡構造線沿いの活断層トレンチ発掘調査の現場で試料の採集を行い、活断層の活動年代を考古地磁気学的に求める試みを行った。その結果、やはり、地震動にともなう再帯磁が起こり地震発生時の地球磁場方向を残留磁化として記録している可能性が極めて高いことが判明した。丹那断層では発掘地の断層活動は、過去2000年以内に起きたものであるとして考古地磁気永年変化曲線と照合すると、西暦7世紀の前半となり、もっと古いものであるとすると、B.P.3000年頃あるいはB.P.4000年頃の可能性が考えられる。糸静線では富士見町のものはA.D.800年頃とA.D.300年頃の活動の活動を記録していると考えられ、3〜4世紀のものは、岡谷トレンチでも観測されている。
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