研究概要 |
5S rRNAの一次構造をもとに生物界の系統関係を明かにする研究は、この三年間で大巾に進み現在約350種の5S rRNAの配列をもとに系統樹が作られ、この研究はほぼ完成の域に達した。この研究によってえられた主な成果は、 1) 主要生物群の系統樹の完成 2) 遺伝暗号の可変性とその要因;遺伝暗号の進化:遺伝暗号は、生物進化の初期に確立し、凍結されたと考えられていた。しかし、本研究でMycoplasma Capricolumのリボソームタンパク遺伝子の解析の結果、終止遺伝暗号UGAがトリプトファンによまれることを発見、更にUGAに対応するtRNA遺伝子およびその転写産物(tRNA)の存在を証明した。この発見と相前後して、原生動物線毛虫で他の終止暗号UAA,UAGがグルタミンによまれることが報告され、遺伝暗号は、その確立後もある範囲で現行暗号表から外れて変化しうることがわかった。この研究の発展として、生物界における遺伝暗号の可変性の範囲,パターン,要因などをふくめ、暗号の進化機構を研究した。遺伝暗号使用頻度の種間における特長は、少くとも細菌界ではゲノム自身のGC含量と相関々係があることが見出されたので、GC含量のもっと低いMycoplasma(〜25%),中間の大腸菌(50%),もっとも高いMicrococcus(73%)などを材料に解析を進め、codon usageはGC/AT biased mutation Pressureに大きく影響されることをつきとめた。この進化圧の仮説をもとに、更に研究を進め、遺伝暗号の進化過程のモデルを提出した。
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