本研究は59年10月になってから追加分として決定通知を受けて11月から開始され、従って60年度にも59年度に於て行なうべき仕事が持ち込されたが、研究分担各一同胞意努力して、次のごとき成果を得、研究報告書も印刷に附した。実績の概要は次の諸点である。 【◯!1】古代末期・中世前期におけるユダヤ人通商の実態解明についての問題提起。 【◯!2】ダビデ王権の問題に関し民衆との間の或る求離の指摘。またユダヤ民族名についての語源的考察。 【◯!3】新約時代に関してはヨハナン・ベン・ザッカイの研究によるディアスポラ・ユダヤ人とキリスト教徒の対決の問題点示唆、更に教父時代に関してはアレクサンドリアのフィロンの学問研究によるキリスト教世界へのユダヤ人の◆作受容の経緯分析。 【◯!4】西欧キリスト教社会におけるユダヤ人問題として、ナチス政権の反ユダヤ政策に対するカトリック教会側の抵抗のあり方や現代プロテスタント神学に於ける同様の問題の別扶。 【◯!5】ソヴィエト・ロシア内礼期のマフノヴィストにおける反ユダヤ主義の検討による東欧地得のユダヤ人問題への示唆 【◯!6】ピコ・デッラ・ミランドーラなどを取り上げてルネサンスにおけるユダヤ神秘主義カバラの導入がもつ意義が闡明されたこと。またスペイン黄金世紀におけるカスタ(純血性)の観念のユダヤ的来由とそれの反戦による反ユダヤ主義が文学的証言に跡づけられたこと。而して和会病理な異常性がユダヤ人社会内部に薺す閉塞状況がウリエル・ダコスタとスピノザの対照に於て明らかにされたこと。 【◯!7】近世初頭ユダヤ人の経済活動の性格解明のためのフランチェスコ修道会公管値展の研究。 【◯!8】新大陸におけるユダヤ人問題の諸相の探究。【◯!9】総じてユダヤ人とは何かの問題についての人類史が考究、極めて飽域は多岐に亘るが、この問題の含む多面性、分層性が極めて明瞭に浮かび上った。今後ひきつづいての學際的追及に大きな諸口を提供されたと言ひうる。
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