2年めの昭和60年度の調査研究は、59年度に収集した大縮尺地形図をベースマップとして下記の4地域で現地調査を実施した。その目的とするところは、いずれの地域も、条里縁辺部の一筆レベルの詳細な水利とその微地形の確認である。 以下にその概要を記す。 (1)近江国 昨年度実施した杣川流域(甲賀町・甲南町)の条里に関しては、その分布限界の確認と地割形態の分析を行ない、その成果は『滋賀大学教育学部紀要』に発表した。また今年度新たに、湖北木之本町・高月町・余呉町を中心に、小規模条里や、郡界をはさむ大規模条里地域の大縮尺地形図を収集し、役場所蔵の地籍図の複写・写真撮影を実施した。 (2)佐賀平野 諸富町の筑後川右岸の条里・非条里地域の一筆ごとのミクロな水利調査を実施し、クリーク地帯の特色を把握した。 (3)讚岐平野 飯山町の仁池掛りの条里・非条里地域における一筆ごとの水利調査を実施するとともに、周辺一帯の水利系統図の収集、小字分布図の作製を行なった。 (4)群馬県高崎市・前橋市周辺 榛名・赤城山麓の水田遺構発掘調査報告書の収集と広域の水利の把握を実施したが、ミクロな現地調査は61年度に持ち越すことになった。 このほか、新たに石川県の手取川扇状地周辺の条里・非条里地域を探訪して資料収集を行ない、比較の視点の強化に努めた。 昨年度購入したデジタイザーは、パソコンと連動させて面積、線分計測が可能なプログラムが完成し、目下、収集データの計測を行ないつつある。謝金は、一部このプログラムの作製に充て、残りは上記の現地調査の学生アルバイト代に充当した。
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