研究課題
一般研究(A)
電子冷却は加速器技術のみならず物理学的にも興味深い研究対象である。この研究課題では先ず電子冷却法そのものを研究し、更に陽子から重イオンの冷却へと研究を進める。冷却装置は軽イオンから重イオン迄最高エネルギ-200MeV/u迄冷却できるように設計した。最高電子エネルギーはこれに対応して120keVである。電子-イオン問相互作用部の長さは1.5mである。電子の直径は5cm、最大電流密度は0.5A/【cm^2】である。電子光学原はピアス電極、アノード加速電極からなり、平板型カソードを一様なソレノイド磁界中に置いた。計算機実験によって1.2kg以下の磁界で0.1eV程度の電子温度が実現可能なことが判明した。この結果に基づいて電子銃及びコレクターは超高真空、高電圧高温も考慮して注意深く設計した。電子誘導コイルは3つのソレノイドと2つの45°トロイドからなる。中央ソレノイドでは±2×【10^(-4)】以下の磁界の一様性が実現できた。真空箱はSUS31.6Lから成り、真空度【10^(-11)】Torrが達成できるように設計した。真空箱内にはドリフトチューブ、位置検出器、アンテナ等が組込まれている。電子の軌道は小型電子ビームを用いて研究した。電子銃から発し、コレクター迄到達する電子の軌道は蛍光板の発光を見ることによって観測した。冷却部での電子軌道の変位は±2×【10^(-4)】以下で、これは磁場測定の結果と良く一致している。電子冷却の過程は計算機実験によって研究し、一秒程度の冷却時間が実現できることがわかった。電子冷却を内部標的と併用することによって高分解能の研究が実現できるが、これに関しても研究を行った。帯電微粒子流を用いる方法で【10^(14)】〜【10^(16)】原子/【cm^2】の厚みが得られた。これは冷却リング標的として最も適した値である。冷却を行う為のイオン蓄積リングは建設中で、完成後直ちに先ず陽子の冷却を、続いて重イオンの冷却も行う予定である。内部標的による発熱と電子冷却の釣合の問題も今後の重要な研究テーマである。
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