研究概要 |
パーフェクトロンは多目的に使用できる新しい原理の分子線散乱装置であるが、いわゆるレーザー化学、特に励起分子のダイナミクスの研究には優れた特性を発揮する。例えば、励起分子の解離における異方性因子βの測定にパーフェクトロンを質量分析モードで使用すれば、ドプラー・フリーでしかも実験室系から重心系への面倒な力学変換を必要としないJacobian=1の測定ができる。したがって從来のフォトフラグメント・スペクトロスコピーのように親分子の速度分布に影響されることもなく、また生成したフラグメントの速度を測らずに重心系の値そのものが得られるので、測定時間は【10^(-2)】〜【10^(-3)】に短縮され、しかも高い測定精度が得られる。勿論エネルギー分析モードでも、また通常のTOFモードでも測定できる、本年度に行なわれた異方性因子βの測定の中で、特筆すべきことは:フォトンのエネルギーが分子の解離エネルギーに等しく、フラグメントの運動エネルギーがOの場合のβと、2光子で解離するときのβの測定である。これらはいずれも世界で初めて観測されたものである。 まず、hν=Do(hνはフォトンのエネルギー,Doは解離エネルギー)の場合のβは親分子の回転の影響が強く効いてβ【〜!_】Oとなる。これはOエネルギーまで測定できるパーフェクトロンだけで行なえる測定で、余剰エネルギーが小さい時に、内部量子状態にエネルギーがどのように分配されるのかを知る重要な鍵を握っている。次に、2hν【>!〜】Doの場合のβで、1光子解離と異なり、2光子解離ではβ∝【P_4】(coox)と4次のルジャンドル関数で表わされるが、β関数の形状から解離するときの励起状態の対称性だけでなく、中間状態の寿命や対称性が決められる。N【O_2】とC【S_2】などて測定して新しい知見を得た。その他レーザー化学だけに限っても、イオンの解離機構に新しい方向ずけを行なうなど、世界をリードする研究が着々と進められはじめている。
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