本研究のために購入した理学電機工業K.K.の全自動蛍光X線分析装置(System 3080E)を使用することにより、下記の研究成果が得られた。 1. チャートの分析:(1)本分析機器を用いて、Si【O_2】を90wt.%以上含有する特殊な岩石の分析法を開発した。(2)その実例・応用として、四国中西部秩父累帯南帯の斗賀野層群中のチャート及びその関連岩(61サンプル)について、11の主要元素と9の微量元素の分析を行い、下部層は遠洋性環境下で、上部層は上方へ向かうにつれて次第に陸源性物質の関与が及ぶ海洋環境下で生成されたことが明らかになってきた。 2. 四万十帯の玄武岩質岩石の分析:化学組成的には大半のものが、海洋底玄武岩(MORB)に類似しているが、同一メランジェ帯内でごく接近した岩体に明らかにアルカリ玄武岩質岩石が含まれていることが明らかになった。このことは四万十帯の付加帯形成メカニズムが極めて複雑であったことを物語っているといえる。 3. 黒瀬川構造帯の蛇紋岩の分析:紀伊半島東部のオフィオライトメランジェ帯中の蛇紋岩の地球化学的研究から、本岩がかんらん岩として形成された後、一度蛇紋岩化(約300℃)し、その後温度上昇(約400°〜500℃)が起こり、再び蛇紋岩メランジェ形成に伴う蛇紋岩化・ブロック化が起こったことが解明された。 4. 愛知県の吉城山"みかぶオフィオライト"の研究:多くの剪断帯によりブロック化し、藍閃石土ローソン石の高圧低温変成岩と角閃岩等の低圧高温変成岩が混在していることが判明した。 5. 神居古潭オフィオライト帯中の塩基性岩類の分析:本オフィオライト中のブロック状塩基性岩類を蛍光X線分析により、微量元素を用いて源岩分類した。その結果、(1)カルクアルカリ岩系の岩石、(2)ソレアイト岩系の岩石、(3)アルカリ岩系の岩石が混在していることが推測され、その形成メカニズムが極めて複雑である可能性が強くなった。
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