上向水平プール沸騰の遷移領域における実験的研究を水及びフレオンを用いて行なった。遷移沸騰熱伝達に大きく伝熱面の状態が影響するので、伝熱面の粗さに注意し、さらに有機物質を伝熱面上にコーテイングした場合を調べた。また、サブクーリングは現象に大きく影響するので重要なパラメータとして扱った。また第二の課題として、伝熱面の大きさによる影響がある。伝熱面の端部は発生泡の側面からも液体が伝熱面の方へ入り、伝熱面中央部とは異なった挙動を示す。この影響をみるために、伝熱面積に大中小の3種類を分けて実験を行った。第三の課題として、核沸騰より遷移沸騰に移行する際の発生気泡の伝熱面付着状態がどのようであるかもみるため(気泡の付着が大きな面積割合を占めることは伝熱に大きな影響を与える)、透明なガラス面を伝熱面とし、加熱液体を透明な熔融塩とすることによって伝熱面の裏側から観察測定をした。 実験に当っては、伝熱面の温度を従来の実験では250℃程度であったものを、さらに高くするため、炭化珪素電気抵抗発熱体により、600℃程度にまで上昇させ、実験データの範囲を拡大した。以上の実験研究より下記の結果を得た。 (1)伝熱面の温度を限界熱流束点を越えた直後は極めて不安定で、その所定温度でとめることは困難であるが、サブクーリングが大なる程、膜沸騰に伝熱面温度が近づく程、面が粗い程安定性を増す。 (2)伝熱面に有機材をコーティングして、昇温で変質させると、伝熱面の温度は、遷移域でも安定なことがある新事実を見出した。 (3)限界熱流束前後の伝熱面上のフレオンの気泡の付着状況が初めて写眞観察することができた。核沸騰では、水の場合と同様、合体泡が点在しているが、遷移沸騰では、合体泡が接近し、液体部分が逆に溝のようになって伝熱面に接着していることが分った。
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