研究概要 |
遷移沸騰の不安定性は本質的なものとすると、でき得る限り測定可能な実験を行ない、その熱伝達の挙動を把握するように努めた。すなはち、実験装置には熱容量が大きく、熱伝導率の良好な銅ブロックを用い、伝熱面に向って、発熱体より集中的に熱伝導を行なはせると共に、従来水の常圧の実験では、150K位が伝熱面の過熱度(通常は100K位)の実験を可成り越えた500Kを伝熱面温度で出せるように、発熱体にシリコンカーバイトを用いた。また、沸騰気泡の伝熱面の近傍,特に付着面の挙動を観察するには、裏面からするのがよいが、透明なシリコンオイルやHSTと稱する溶融塩を加熱体とし、石英ガラスの薄い面を伝熱面として、斜め下より光線を入れ、伝熱面上の気泡付着面の反射により、写真観察を行なった。さらに、伝熱面の大きさにより、伝熱面の側方より液の入り方が異なることによる影響,それを強制噴流により行はせた場合の熱伝達への効果及び伝熱面の状態が滑らか,粗か,粗面でも上水道水のスケール付着による面並びにシリコン系樹脂塗布による熱伝達への影響を調べた。以上の実験解析より下記の結果を得。 金属面での粗面と、上水道水によるスケール付着粗面については、金属平滑面より、遷移沸騰熱伝達は良好で且つ不安定性が少くなっており、特にサブクーリングが大きい場合はこの傾向が強まることを示した。粗面の種類としては濡れ性が同様ならその種類に上る差は判別し得なかった。濡れ難い面では、通常遷移沸騰は極めて不安定で測定はできないが、今回の実験では、部分的に塗布面が剥がれたせいか、連続的に比較定安定で測定し得たが、熱伝達は良好ではなかった。伝熱面の側方の影響はある伝熱面以上の大きさで存在し、故に強制噴流もその効果をみることができた。伝熱面上の気泡付着面は、フレオンでは水よりやや小さいものの、限界熱流東に対して同じ傾向の曲線を得た。
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