電圧パルスにより表面原子の電界蒸発を促進し、蒸発イオンを逐一分析するアトムプローブ(A-P)は、金属材料の極微領域の分析に広く用いられているが、GaAsやGaP等の化合物半導体の分析ではGaイオンの検出数がAsやPイオン数より著とく少なく、化学量論的組成が得られない場合が多い。そこで、本研究では、直線型、偏向型、映像型を組み合せた複合型A-Pを製作し、その原因が、AsやPの電界蒸発の直後、その近傍のGaがパルス電圧が降下した後の低いDC電圧でも優先的に蒸発し、これらのイオンが検出されないことにあることを明らかにするとともに、偏向型の偏向電極電圧と試料に印加するパルス電圧を最適化すると、化学量論から期待される組成が得られることを示した。この複合型の特長は、イオンの検出に有効入射面の広いシェブロン型電子増倍器を、そして、イオンの飛行時間を測定するタイマーに信号波高弁別型を用いてイオンの検出効率を高めたこと、32ビットのコンピュータによりデータ処理を迅速化したこと、映像型A-Pの制御にストーレジオッシロスコープを用いたことにある。 複合型A-Pによらず化合物半導体を分析する今一つの手法として注目されているのは、パルスレーザー光を試料に照射して電界蒸発を促進する手法である。本研究では、レーザーとしては、幅が0.8ナノ秒、ピークパワー200KWのものが用いられたが、この手法においても、正しい組成を得るにはレーザーパワーと試料に印加する電圧を最適化する必要があることを見い出し、最適条件を明らかにした。この成果をもとにして、Al-GaAs界面が調べられ、パルスレーザーと電圧パルスによる分析結果の比較がなされた。予期せぬ知見としては、パルスレーザー法ではAl-GaAs界面でAl-Ga置換反応により形成されたAlAs層と下地のGaAsとの間に数原子層のGa層が見い出されたことである。 現在、Ga層形成の原因が調べられている。
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