研究概要 |
放射線を用いたラジオグラフィーおよびトモグラフィーなどの透過画像撮影法のうち、従来のエックス了、ガンマ線、熱中性子などの入射放射線とする方法に比べ、共鳴エネルギー領域の中性子を用いる方法の利点は、各原子核の固有の性質として決まっている共鳴反応を用いることにあり、従って核種同定が可能な透過画像データが取得できることにある。この共鳴中性子を用いたトモグラフィー法を実験的に検討し、適用性について検討するため、まずトモグラフィーシステムの開発改良を行ない、次に基礎データの取得と検討を行なった。 トモグラフィーシステムは、【◯!1】共鳴中性子ビームを東大の35MeV電子ライナックによるパルス状光中性子源と飛行時間法を組合せることによる得ること、【◯!2】共鳴中性子ビームの試料透過画像を一次元の位置敏感型He-3比例計数管とその計数データ記録システムにより求めること、【◯!3】試料への中性子入射角度を変えたデータを多数取得しこのデータ処理をして試料内断面図を求めること、の3段階により構成された。 今回は、特に各飛行時間tと検出器内での計数位置xという二次元データ(t,x)を64Kチャンネルの2パラメータパルス波高分析器により測定するシステムを完成し、これを用いてトモグラフィーシステムとしての基礎データの入手を行ない、中性子源強度、計数率、空間分解能、エネルギー(時間)分解能、測定システムのチャンネル分解法などにつき検討および最適化を計った。そしてコバルトおよび金の試料に対し、実際の透過画像データを取得し、トモグラフィー実験の基礎としてのラジオグラフィー実験解析を行ない、約8時間(1日)の測定で、空間分解能1.5cm、画像データのバラツキが5mm巾当り20%の値が得られることが分った。現在の装置はトモグラフィーとしては強度不足であるがラジオグラフィーとして利用できる。
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