研究概要 |
本研究では超高真空下から実際に反応が進行する条件下の広い領域にわたり触媒表面を直接観測出来る極めて高感度な赤外透過法,赤外反射法などの手法を開発する。そしてそれを用いて触媒反応の機構を分子レベルで解明して高活性,高選択性触媒開発の基礎としようとすることを目的にした。 (1)高感度フーリエ変換分光光度計(FT-IR)による触媒表面吸着の測定;FT-IRを導入し、ガラス製真空系,透過用IRセルを用いて酸化ジルコニウム上でのCOとの水素の反応を反応条件下で測定し、反応中表面に生成する吸着種がギ酸イオンおよびメトキサイドであることが確かめられた。メトキサイドはメタノール合成の中間体であることがわかった。また【ZrO_2】上で水素が解離吸着することをIR法によって初めて見出された。その他【TiO_2】上の【N_2】,【H_2】の吸着CO/【Al_2】【O_3】上の【N_2】の吸着が高感度IR法によって詳細に調べられた。 (2)高感度反射吸収法(FT-IR・RAS)の開発;FT-IRによる反射吸収法を完成させた。高性能ロックインアンプ,偏光変調器(PEM),反射測定用ユニットを用いることによって目的とするFT-IR・RASを組立てることが出来た。アラキジン酸塩のLangmuir-Blodgett膜を用いてテストした結果、サブモノレーヤーで4000〜650【cm^(-1)】までの測定が可能であることが確かめられた。 (3)FT-IR・RASの触媒研究への応用;触媒反応に用いるRAS用セルを開発しこれによって種々の金属鏡面上での吸着と反応の研究を行った。銅板上での種々のカルボン酸の吸着状態が調べられた。またNi触媒上に吸着した酒石酸の状態が調べられた。Cu板上でのメタノールからのギ酸メチルの反応が調べられた。メタノール存在下ではメタノールの状態で吸着しているが、気相を除いた系ではオキシメチレンの状態で吸着していることがわかった。このように反応条件下での表面吸着種の状態が明らかになり、分子レベルでの反応の解明が可能となって来た。
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