研究概要 |
1.センダン科Lansium domesticumの果皮より得た抗アレルギー性トリテルペン配糖体Lansioside類の全合成を以下のようにして完成した。 まず、さきに開発したオレフィン環化剤水銀トリフラート・アミン錯体を用いてトリルファルネシルスルホンをドリマン形二環性化合物に立体選択的に閉環させてのち、生じた環内二重結合を二段階でエキソ形二重結合に高収率で変換した。この化合物の11位にファルネシル基を縮合させて【C_(30)】の全炭素を揃えた後、第二段の環化反応により、非対称オノセラン形化合物に閉環、ついで両デカリン環の3位及び3′位をケトンに変えることによりα,γ-オノセラジエンジオンの全合成に成功した。この化合物は、原料植物果皮の抽出物中に含まれ、Lansioside類の前駆物質と考えられていた。この様な非対称形天然オノセラノイドの全合成はこれが最初である。ついでこの化合物の3位及び3′位の二つのケトンのうち、3位だけを水素化ホウ素ナトリウムで低温で選択的に還元することに成功したので、この還元物の3′位にケトン基を有する方のデカロン環をベックマン開裂によって開環しアグリコンであるLansiolic Acidの全合成に成功した。ついでこのアグリコンをメチルエステルとした後に、3位水酸基にβ-D-グルコサミン,β-D-グルコース,β-D-キシロースを結合させることにより、三種のLansioside A,B,Cの全合成を完成した。 2.同じ植物の種子には苦味成分として【C_(26)】の結晶性化合物が多種含まれていることがわかり、精製の結果六種を分離し、これらをDukunolideと名付けた。主成分Dukunolide AはNMR及びX線構造解析により、新しい転位リモノイド形テトラノルトリテルペンと決定された。その他の化合物は、AとNMRの比較検討並びに化学的誘導により構造を決定した。
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