研究概要 |
1.インドネシア産のセンダン科植物Lansium domesticumの果皮より分離したセコオノセラン形配糖体LansiosideAは抗アレルギー作用を示すので、その全合成を計画し、まずそのアグリコンLansiolic acid(1)の合成を研究した多環性テルペノイドを生体内生成機構類似の手法により合成するため、先に開発した高効率オレフィン環化剤,水銀【II】トリフラート・アミン錯体を用いてファルネシルトリルスルホンを環化させ、1のA/B環に相当するデカリン誘導体に導いた。この中間体の11位を更にファルネシル化して【C_(30)】の炭素数を揃え、再びファルネシル側鎖を上記閉環反応に付して、第一の目的物α,γ-オノセラジエンジオン(2)を合成した。2はL.domesticumの果皮中にも含まれるので、この合成は、最初の非対称形天然オノセラノイドの最初の全合成である。2のA,D環をBeckmann開裂により同時に開くと、ビスセコ体のジカルボン酸Lansic acidになる。これは果皮の主成分である。2のA環内カルボニル基だけを選択的に環元して水酸基としておき、残るD環ケトンをベックマン開裂させる事により目的のLansiolic Acid(1)の全合成を完成した。 2.その他、二三の熱帯産センダン科植物より、新しい魚毒活性成分を分離し、構造を決定した。 3.π(アレーン)トリカルボニルクロム錯体が示す特異なベンゼン環の性質と立体化学的特徴を利用して、上記センダン科魚毒成分ヒドロキシカラメネンの全合成を行なうと共に、この錯体を用いてベンジル位,ホモベンジル位,ビスホモベンジル位での立体特異的C-C結合形成の新しい一般的手法を開発した。 4.熱帯中南米産のDendrobatos属毒蛙の神経毒成分を研究し、種々の二,三環性アルカロイド類を分離し、二次元NMRなど高次の手法を駆使してそれらの構造を決定した。
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