研究概要 |
1.種々のCu(【II】)キレート錯体のESRを測定し、電子スペクトルその他のデータと比較して、それらの構造を研究した。とくにCu[(β-dike)(diam)]X(β-dike=β-ジケトナートイオン,diam=N置換エチレンジアミン)および[Cu(daco)【_2】]【X_2】(daco=1,5-ジアザシクロオクタン)について、前者については溶液中の著しいソルバトクロミズム,後者については固体の異常なサーモクロミズムが、それぞれの系における錯体と溶媒分子や陰イオンとのドナー・アクセプター相互作用によるものであることを、ESRの結果を用いて検証した。(曽根・福田)2.種々のN,N´-2置換ビアクリジニウム塩類・ビキノリニウム塩類を合成し、溶液中光照射下で対アニオンからカチオンへの電子移動反応、結晶中加圧下での分子内・分子間電子移動反応に及ぼす構造の影響を検討した。また種々のパラ置換メソテトラフェニルポルフィリンとそのコバルト錯体を合成し、求核試薬との反応性を研究した。軸配位子となり得る試薬と金属と相互作用には試薬のpKaとの相関が認められ、またメソ位のフェニル核はポルフィリン環とほぼ直交しているのに、なおパラ位の置換基の影響が認められた。さらにC-C結合のラジカル開裂に及ぼす光・熱・圧力等の影響をビス(ベンゾフラノニル)類についてESRによって研究した。(前田)3.ヨウ素およびセシウムと黒リンとの層間化合物の存在を確認し、その構造、電導性などを明らかにした。またAgaTCNQをアクセプターとする数種の電荷移動錯体を合成し、その結晶構造、電子物性を明らかにした。さらに分子内プロトン移動型分子を数種類合成し、プロトンと電子との相互作用の可能性を検討した。両者が強く結合した系を見出すことができれば、全く新しい物性の出現が期待できることがわかった。(丸山)
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