研究概要 |
本研究は金属錯体の関与する溶液内反応を熱力学および反応速度論の両方から研究し、金属錯体の溶存状態,錯形成のエネルギー関係や反応機構を明らかにすることを目的とした。研究結果は以下のように三つの観点からまとめることができる。 (1) 金属錯体の溶存状態の研究 錯形成反応の安定度定数や反応熱を測定することによって、各種金属錯体の溶存状態とエネルギー関係を明らかにした。またこれらの結果にもとづいて得られた溶存状態に関する結論を、X線結晶解析による分子構造の研究結果と比較検討した。 (2) 錯形成反応機構の研究 高圧ストップトフロー法を用いて各種溶媒中での迅速な錯形成反応の活性化体積を測定し、溶媒や配位子の「かさ高さ」と反応機構との関連を解明した。 (3) 溶媒交換反応機構の研究 多核種NMRを用いて第一還移金属(【II】)イオンの酢酸交換反応速度を測定した。さらに高圧下でのMn(【II】)イオンの各種溶媒交換反応を測定し、活性化体積を決定し、反応機構と溶媒効果を明らかにした。 本研究の大きな特徴は、金属錯体の熱力学的および速度論的挙動を明らかにするため、我々が独自に開発した高圧ストップトフロー装置,高圧多核種NMRプローブ,高圧超音波吸収セル,自動演算系を有する熱量計ならびに高精度膨脹計を用いて反応体積や活性化体積,熱力学的パラメーターを積極的に測定し、金属錯体の関与する溶液内反応の反応機構や溶存状態を解明したことである。
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