研究概要 |
本年度に購入した設備、水銀圧入式ポロシメーターと三次元粗さ測定器を十分活用し、前年度までの実績(昭和59年度科学研究費補助金実績報告書参照)以外に新たに得られた知見を以下にまとめて記す。 1.耐火れんがにおける気孔の測定より算出される各代表径は、モード径が最小で、面積平均径、メディアン径、体積平均径の順に大きくなるが、面積平均径はモード径より常に大きいとは限らない。また、体積平均径における累積気孔量は、面積平均径におけるそれの約2.2倍である。 2.耐火れんがの気孔径分布は長い裾を持ち、複合ワイブル分布として取り扱うことができる。 3.耐火れんがにおいては、気体の平均自由行程の10倍以下である径の気孔が存在するため、れんが内の気体流には層流の他に拡散流れも関与するが、加圧法においては後者の寄与は小さくて気体の種類に依らずほぼ同一の通気率を示す。また、水を流体とした測定値は加圧法のそれと等しい。 4.カルマン式に基づいて拡散項で算出した水力半径は、層流項によるそれよりも大きい。 5.通気率法による空孔表面積値は、吸着法による測定値より大きく高い相関は認められない。しかし、水銀圧入法によるそれは、吸着法の測定値の約1.5倍となる。 6.水銀とアルミナ質およびムライト質耐火物間の接触角は、それぞれ2.54,2.44radと実測され、Ritterらの推奨値に近い。 7.耐火れんがの気孔を通してスラグが浸透する現象を定量的に解析するために、滓化反応などを考慮した式を導出した。それに依ってスラグの物性値や耐火れんがの多孔特性値を用いて反応を伴う浸透現象を予測する方法を見い出した。
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