1.組織の生成と設計 炭素材料の多様性がその微細組織に主として由来することを示すとともに、それを整理し、新しい分類法を提案した。そして、ピッチとフェノール樹脂およびピッチとポリ塩化ビニルの混合割合と炭素化条件(圧力)によって、生成炭素の光学組織、さらには粒子のモルフォロジーを広い範囲に制御しうることを示した。これらの組織は炭素化反応の生じる前の段階での試料の粘度に強く左右されることを、ピッチ/カーボンブラック分散系の粘度の温度依存性とそれを炭素化した後の組織との対応から示した。また、ピッチの粘弾性パラメータは非常に強くその分子量に依存している。 2.破壊挙動解析 力学的非線形性を示す炭素材料の破壊挙動を、一般的なエネルギー論の立場から解析し、破壊に伴って散逸する非線形エネルギーの重要性を示した。炭素材料の破壊における非線形エネルギーの大部分が、マイクロクラッキングに由来するものであり、プロセスゾーンおよびそのウェイクがきわめて広く、亀裂進展に対して重要な役割をはたしている。マイクロクラックの発生は、その炭素材の組織に強く依存し、亀裂進展抵抗性の熱処理温度依存性、フィラー粒子寸法の影響などを実験的に検討した。また、非線形破壊力学パラメータの実験的決定法を確立した。 3.電極反応挙動 種々の組織を持つ炭素繊維類(気相成長、メリフエーズピッチ系、PAN系)を種々の温度に加熱処理したものを電極として、濃硫酸中での電気化学的挙動をサイクリックボルタンメトリー法によって検討し、黒鉛-硫酸層間化合物および黒鉛酸の生成・分解との関連で考察した。層間化合物の生成は、電極炭素繊維の構造(黒鉛化度)に依存するとともに、その組織にも強く影響されている。結晶子配向が良好なほど、インターカレーションおよびデインターカレーションが容易であることが示された。
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