研究概要 |
生物が本来有している自己防衛的能力(抗菌、摂食阻害など)や他を攻撃する手段(他感作用、毒素など)を究明、それらを利用して生態系に対するインパクトの少ない病害虫・雑草防除法の確立を目指して本研究に着手し、本年度に行った研究実績の概要は次の通りである。 1.サルオガセ属地衣類より植物生育阻害物質として、フェノールカルボン酸3種、デプシド(フェノールカルボン酸同士縮合したエステル)6種を単離同定した。キレハイヌガラシの地上部からhirsutinとは別の植物生理活性物質の存在を確認した。 2.アズキ落葉病菌には病原性の強いType Aと弱いType Bとが知られているが、アズキ植物の根部をType B菌処理によって、根に誘導的に生成する抗菌物質の存在を明らかにし、クメスタン誘導体、イソフラボノイド2種、ナリンゲニンをそれぞれ単離同定した。またチモシーがまの穂病病徴部から、抗菌物質としてchokol A,B,Cと名づけた新規5員環テルペンを見出し、それらの構造を決定した。 3.ラッキョウの酸性アミノ酸区分を精査し、多量のγ-Glu-Phe,N,N′-bis-γ-Glu-cystineのほかγ-Glu誘導体6種を単離したが、全て既知物質であり、同じAllium属のタマネギ、ニンニク等に含まれ、C-S lyaseの作用により生理作用を発現するような物質は見出されていない。現段階ではラッキョウ中でC-S lyaseの基質となり得るのはγ-Glu-s-Me-cysteine sulfoxideのみである。 4.イエロウ・ルーピンの根から新規複合イソフラボン5種、新クマロノクロモン1種、および5-1-メチルイソフラボン6種(うち4種は新規化合物)を単離同定した。先に成分分析を行ったホワイト・ルーピンのイソフラボン相との相違点を明らかにした。その他マメ科植物、Calopogonium mucunoidesの抗菌性プテロカルパン類やShuteria vestitaの抗菌性3-ヒドロキシフラバノン類の構造解析も行った。
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