研究概要 |
1978年に生理活性天然物を合成するのに、酵素反応(分子に不斉中心を導入する)と有機合成を組み合わせることをはじめた。酵素として豚から得られるpig liver esterase(PLE)を用いることにより、基質特異性の壁を打破することができ、一般的合成法となり得ることを世界に先駆けて証明することができた。すなわち目標分子を有用抗生物質から選び以下のとおり逆合成的に合成戦略をたてる。 (1)かなり複雑な天然物でも、その分子の中に対称要素を求めて逆合成してゆくと、6対称面を有するジエステルにたどりつく。この思考プロセスをsymmetrizationと呼ぶことにする。 (2)ついで対称ジエステルを不斉加水分解して、分子全体を不斉中心とするハーフエステル(6→【C_1】対称への変換)とする実験プロセスをasymmetrizationと呼ぶ。 (3)ついでキラルなハーフエステルから標的分子を構築する。この全体のアプローチをsymmetrization-asymmetrization conceptと呼ぶ。 この方法論によって、61年度は、ホーチミシンの全合成、PLEの活性部位に対する作業假説の提出、さらには抗腫瘍性マクロリド・リゾキシンの重要部位の合成を行なった。本研究者らが過去8年間に展開してきたアプローチは、世界各国からの著名なシンポジウムの招待講演(Ciba Foundation Symposium,1984;第5回IUPAC国際有機合成会議、1985,B【u!¨】rgenstock Conference、1986,日本化学会秋季大会、1986など)を通じて成果を問うことができた。
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