視細胞外節における光情報伝達過程の種々の段階について、以下のことを明らかにした。 (1) ロドプシンのピコ秒レーザー閃光分解を行ない、バソロドプシンの生成以前に生成する新中間体"フォトロドプシン"を発見した。また、従来の研究で、フォトロドプシンの生成が見出されなかったのは、非常に強いレーザー光でロドプシンを励起していたからであることを明らかにした。 (2) フォトロドプシンからバソロドプシンへの変化過程に重水素効果があるかどうかを検討した結果、フォトロドプシンの生成及び崩壊ともに重水素効果は観測されなかった。 (3) レチナールアナログを発色団とするロドプシンアナログの光化学反応をしらべ、ロドプシンの発色団の光異性化は、発色団のβ-イオノン環が固定されたままで起こること、及び、バソロドプシンからルミロドプシンへの変化は、発色団のβ-イオノン環が動くことにより、オプシンの構造変化が誘起され、その結果、発色団とオプシンの相互作用が変化するためであることを明らかにした。 (4) 視細胞外節に対する【^3H】-cGMPのフォトアフィ=ティーラベルを行った結果、cGMPに特異的に結合する分子量100Kと92Kの内在性タンパク質が、チャンネルタンパク質の候補として見出された (5) 視細胞外節に存在するcGMP依存性のリン酸化タンパク質をカラムクロマトグラフィーにより精製し、その生化学的諸性質及びリン酸化反応の生理的意義を調べた。その結果、このリン酸化タンパク質は、PDE活性を上昇させる作用のあることを示唆する結果が得られた。 (6) アイオドプシン、ハロロドプシンのモノクローナル抗体を調製することを試み、それぞれについて、5種類の抗体産生ハイブリドーマをクローニングした。
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