本研究は、サンゴの生殖細胞から群体に至る形態形成過程を総合的に理解することを目的とし、以下の研究を行った。 1.イワヤマハマサンゴの群体間の癒合率が高いので、無性生殖又は単為生殖の頻度が高いことが予想されたが、1985年4月〜9月の間に調べたところ、単為生殖の可能性が高いことがわかった。 2.ハナヤサイサンゴは、冬期(1月〜3月)の間は有性生殖を停止する可能性のあることがわかった。 3.ハナヤサイサンゴのプラヌラ幼生の定着後の成長過程を走査型及び透過型電顕で観察した。定着1週間後、中央に大型ポリプ、周辺に6個の小型ポリプを具える幼体の骨格は、5×15μmの小粒炭酸石灰から構成され、それらの形成途中と思われる1×2μmの微小な紡錘状の基質を伴った顆粒も観察された。 4.イシサンゴ類の再生時及び成体の骨格の結晶構造を走査電顕で調べた結果、球状及び紡錘状の結晶体から構成されていることがわかった。なおこれらの結晶体の形成機序に関する研究も継続中である。 5.離脱直前のクサビライシ骨格の予定離脱面をダイヤモンドソースで薄切りし、カーボランダムで研ました50〜100μmの切片を光顕及び顕微X線像で調べた。その結果、骨格部の溶解により生じた間隙は0.3mmで粉末化しつつある骨格部の深さは30〜50μmであった。 6.クサビライシを、付着した岩ごととり出し、引張試験機に固定し、5mm/minの速度で引っ張りその強さを求めた。その結果、離脱直前のものでは傘と柄で切れその時の強度は2Kg以下であった。離脱直前より前のものでは岩と柄で切れ、その強さは3〜30Kgである。 7.約15種のサンゴの破片の生存・生長を調べた野外実験の結果、破片を針にしばりつける方法は、他の方法より生存率が高い事がわかった。また生存率、生長について環境要因との関係を調べた。
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