寒地畑作物栽培上の課題は、限られた温度資源の有効利用による最大収量の獲得にある。本研究は、既往の畑作物生育促進技術を評価・総合し、寒冷地畑作全般に応用することを目的としている。 1.飼料用トウモロコシにおける低温発芽性、低温生育性および耐冷性は、3者に相関関係がなく、たがいに独立した形質であることを証し、このことから収量を犠牲にせず、低温下で発芽初期生育の良好な品種を育成しうる可能性が示された。 2.寒冷地における飼料用トウモロコシの育苗移植栽培適応性を検討。一般に多収となる中晩生種でも成熟刈取りは可能となるが、収量的には、慣行の早生種直播栽培に及ばず、検討の余地が残された。 3.トウモロコシ・インゲンマメ間作による増収性は、LERでみると0.983-1.390で、最高収量は両作物の協同効果によるものである。年次X処理間の相互作用から、防風昇温効果の存在がうかがわれた。 4.ダイズで、栽植密度を変え、正方形植えの子実収量とその構成形質に及ぼす効果を検討した。疎植区、標準区では正方形植えが増収(8.5-11.4%)となるが、正方形植えの効果は単純ではなかった。 5.オーチャードグラスで、温度反応性の異なる12品種を用い、茎数と草丈の相対増加程度を比較した。低温(12.5℃)では、耐凍性の大きい品種ほど茎数、草丈増加率が低く、休眠性との関係が示された。 6.畑作物の盛夏の最高葉温が、数種の作物を用い熱電対で測定された。気温約30℃で、葉温との差は5-7℃、最高12℃もあり、ときに有害となりうることが示された。 7.オーチャードグラスを用い、厳寒期の植物体温、凍結被害度と収量との関係をみたところ、高い相関関係がみられ、また、冠部温度あるいは耐凍性のわずかの差異が、生存臨界温度域では株の生存や収量に大きく影響していることが判明した。
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