研究概要 |
1)人工林斜面の表層土壌の水文特性とそれが雨水流出過程に与える影響:古生層,花崗岩,新第三紀層の3地質斜面において簡易貫入試験機を用いて表層土厚と全土層厚(基盤岩までの土層厚)を測定し、斜面傾斜角との関係で整理した。斜面傾斜角に対して最大土層厚の存在と土壌発達にともなう土層厚の増大が確認された。一方これら土層の透水係数が測定され、表層土では【10^(-2)】〜【10^(-3)】cm/secの値を示し、雨水流出に基盤土層の与える影響が大きいことが確認された。 2)更新保育作業方式が林地表層の水文循環に与える影響:スギ15年生林において施業と降雨遮断の関係を実験した。対照区(林外),標準区,間伐区(2区),枝打区(2区)を作り、夏期半年間測定した。間伐、枝打ちを行った当年は伐採枯枝葉が樹冠葉と同じ葉面蒸発効果を発揮し、標準区と間伐区,技打区が遮断総量において差異が認められなかった。また本実験を補うために吊下げ型直接遮断測定装置を新しく考案して実験を開始した。本実験装置により遮断の主要因である降雨時の葉面蒸発量と蒸散量が直接測定でき、新しい実験が可能となった。 3)更新保育作業が流出水の水質に与える影響:吸引法による土壌水採取装置を新しく実用化した。これを用いて施肥肥料要素の土壌および土壌水中での動態を詳細に調べた。その結果、A層の厚い土壌では肥料要素が高濃度で長期間土中に滞留するが、A層の薄いところでは滞留の量および期間が小さいことが判明した。流出水中の栄養素の濃度は土壌中のものより著しく低く、変動が小さいことが分った。 4)水資源確保に望ましい人工林の施業体系に関する研究:斜面の土層條件,森林條件を考慮した斜面の雨水流出過程を考察し、これに基づいた水資源確保に望ましい森林施業につき論じた。具体的施業例としての複層林施業につき実地調査を行った。
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