昭和60年度研究実施計画として次の3点に重点を置いた。1.トキソプラズマ(Tp)原虫の大量かつ長期連続細胞培養法の開発 2.Tp原虫抗原の精製、3.Tp抗原投与の生体内反応効果。 1.Tp原虫の試験管内長期連続細胞培養法の開発;59年度における研究で得られた基礎成績をもとに、培養の自動化及び簡略化に関する基礎データーの集積に努めた。Tpの宿主細胞として59年度同様HeLa細胞の浮遊培養標本を用いた。また、培養液の潜在培養力価を示すものとして、単位液量が、単位時間(日数)にどのくらいのHeLa細胞を生残させ得るかを示す指数をmedium Index(MI)を定め、培養液交換の指標とした。この結果、常に新鮮かつ生残率の高いHeLa細胞をTpの主宿細胞として供給できる様になり長期的なTp増殖が上り可能になった。理論的には、もし完全無菌が可能であれば数ヶ月から数年に至るTp連続培養と継続的なTp増殖槽からのTp採取が可能である事が証明された。ただし、今後その簡略化には、MI計算のデーターとしてHeLa培養槽及びTp増殖槽におけるHeLa細胞及びTp虫体数の自動計測装置を取み込み、培養液交換の完全自動化が望まれる。また、長期間培養槽内で分裂増殖したTp原虫の分裂増殖能は、腹腔内で増殖していたTpのそれとほとんど差が認められなかった。 2.Tp原虫抗原の精製:現在考え得る化学的精製法を用いて精製を続けているがいまだ純品を得るに至っていない。遠心分画法により得られた16000g上清に有効な抗原物質がある事がわかった。しかし、それらから更に進んだ分析の手技・手法は今後の問題である。 3.Tp原虫抗原投与の生体内反応効果;先年度の成績の作用機序を解明するために、Tp抗原投与動物の脾臓細胞及びin vitroでのTp抗原感作脾臓細胞について検討を加え、Tp抗原が、in vivo及びin vitroの系でマクロファージやT-リンパ球の生理機能に作用をもつ事が明らかになった。
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