研究概要 |
IDPN中毒ラットの末梢神経を急速凍結ディープエッチ法で検討した所速い流れで送られる膜小器官は軸索中心部に集した微細管領域に集中して存在し、微細管領域は微細管同志の間のクロスブリッジと膜小器官と微細管の間の短いクロスブリッジより形成されている事が分かった。蛍光抗体法及び免疫電顕法で微細管同志の間のクロスブリッジは主にMAP1AとBで形成されている事が示された。 ザリガニ巨大神経軸索を用いた実験では、単離した軸索内の小器官の動きを、微分干渉顕微鏡ビデオカメラ,タイムラプスレコーダーを用いて記録した。順行性と逆行性の動きが観察された。0.02%サポニンで処理後15分程でこの動きは完全に止ったが5mMATPを加える事により再開した。このATPを洗い流すと又動きは止った。この新鮮材料サポニン処理、ATP処理後の三種の軸索を急速凍結,ディープエッチ法で処理し電子顕微鏡で観察した。新鮮材料では可溶性蛋白の存在の為細胞骨格要素の明瞭な観察は困難であったが、サポニン及びATP処理群では明瞭に細胞骨格が観察された。それは微細管同志の間のクロスブリッジ及び微細管と膜小器管の間の短いクロスブリッジとから形成されていた。Fアクチンは軸索中心部には認められず微細管とクロスブリッジが膜器官の輸送にとり十分な構造である事が分かった。微細管に関連したクロスブリッジの化学組成を検討する為、ザリガニ末梢神経よりタクソールを用いたMAPsを生化学的に分離し主なMAPとして270KDの蛋白を同定した。これは熱処理に抵抗性で低角度回転蒸着法により約104nm長の桿状の蛋白でありラット脳よりとったチュブリンの重合を促進する事が示された。又抗MAP2抗体と反応し軸索を染めたのでこの270K蛋白が微細管同志の間のクロスブリッジの主要素である事が示された。従って膜小器官と微細管の間の25nm長のクロスブリッジがモーターである可能性が強く示唆された。
|