研究概要 |
本研究は、ほぼ当初の計画に沿って順調に進んでいる。 1.TR株及び野生株の同居感染実験 C3H及びDBA/2の4週令♀マウスに、250HAのTR-5及び野生株ウイルスを経鼻接種し、感染後1日から6日迄の間、これらのマウスと正常マウスとを同一ケージ内に同居させた。野生株ウイルスの場合は、感染マウス1匹に対して正常マウス5匹の割合で、TR-5の場合は3匹対3匹の割合で同居させた。感染が伝幡したか否かは、同居開始4週間後に、各マウスのHI抗体価を測定する事により判定した。その結果、TR-5では、4つのケージ全部で同居感染は見られなかったが、野生株の場合は、DBA/2マウスでは使用した3ケージ全例のマウスに同居感染が見られた。但しC3Hマウスでは2ケージ中1ケージのみに、5匹中3匹に同居感染が見られた。 2.TR株接種による感染防御の持続期間 DBA/2マウスにTR-5株の0.5HAを経鼻接種後、2ケ月おきに野生型ウイルスを攻撃し、感染防御能の消長を見た。実験はなお継続中であるが、8ケ月迄は完全に防御したが、10ケ月後では約半数(3/7)が死亡した。 3.プロテアーゼ変異株(TR-2,TR-5)のトリプシン抵抗性発現機構TR-2およびTR-5のF遺伝子を決定し、これを野生株のそれと比較した。その結果、TR-2およびTR-5ではF蛋白の109位のAsnがAspへ、116位のArgがIleへと変異していた。TR-5から分離した、トリプシン感受性のrevertantでは、116位のIleのみがArgへとback mutationしており、これらのことから、TRのトリプシン抵抗性はF蛋白のCleavage Siteである116位のArgの変異により引き起こされたものであると考えられた。
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