研究概要 |
昭和30年代末より昭和50年代末までの20年間にわたり大阪,秋田両地域の固定集団を追跡観察し、20年前,10年前、現在の3時点において、脳卆中、心筋梗塞の発生率、循環器検診の所見、栄養摂取状況等の生活環境要因を世代別に比較検討した。その結果、中年に到るまでは在来の酷しい生活環境の中で質素な生活を営み、中年に達した昭和40年代頃から、最近の生活環境の近代化の影響を受けた人々と、青年期後半よりすでに豊かな生活環境にあった現在の中年期前半の人々では、近年の環境変化の影響が大いに異なっていることが明らかになった。 (1)秋田農村では生活の近代化に伴い、30才代以上では血圧値は低下し、逆に血清総コレステロール値や肥満度は、従来の極端な低値から脱し上昇した。しかし、血清総コレステロール値は都市住民よりもなお低値を示す。そして、脳出血は減少し、脳梗塞も中年期、初老期では減少してきた。従来、脳出血のリスクファクターとされてきた高血圧と、ネガティブリスクファクターとされてきた血清総コレステロール値は、ともにその影響力が低下した。しかし、現在の30才代,40才代では20年前の30才代,40才代と異なり、肥満と高血圧の間に有意の相関が認められるようになった。今後、農村においても、これより後の世代には肥満と関連の深い都市型高血圧の動向に注意を要する。 (2)都市では血圧値は20年前から比較的低値を示しており、血清総コレステロール値、肥満度は比較的高値を示していたが、この傾向を20年間で多少強めながら現在に到っている。そして、都市の事務職、現業職の集団では、現在の40才代,50才代は20年前の同年代の人々に比
|