1) 冠動脈攣縮の実験的誘発とその機序について 【◯!1】ミニ豚冠動脈の内膜剥離3ヵ月後、ヒスタミンによって再現性良く冠攣縮を生じることを確認し得た動物において、thiothromboxane-【A_2】(ST【A_2】)の攣縮誘発作用、PG【I_2】の防止効果を検討した。何れも有意の影響を与えなかった。ロイコトルエン(LT)【D_4】、【E_4】は夫々1.10μgの冠動脈内注入により、心筋虚血を誘発し造影剤の冠動脈内充満遅延を起こしたが、限局性の攣縮を起こさなかった。LTの拮抗剤であるFPL-55712を前投与するとLTの作用は抑制し得たがヒスタミンによる冠攣縮は抑制しなかった。従って、LTはわれわれが開発した実験的冠攣縮には直接関与していないと思われた。しかし、細動脈の過剰収縮による心筋虚血誘発作用はあると考えた。【◯!2】冠攣縮をin vitroの環境で再現しうる条件をin vivoで冠攣縮を起こした12例について検討した。即ち心臓を摘出後電解質液(Krebs-Henseleit液)で潅流し乍ら潅流液中にヒスタミンを添加すると容量依存性にin vivoの場合と同一の冠動脈攣縮部に同程度の冠攣縮を認め得た。異常収縮の原因としてヒスタミン受容器依存性の【Ca^(++)】の過剰流入が示唆された。 2) 血管平滑筋の細胞生物学的検討 【◯!1】遠心分離、蔗糖密度勾配遠心分離法により細胞膜成分に富む分画を得る方法を確立した。豚大動脈と冠動脈から細胞膜分画を抽出し、受容体の数や性質を放射性標識リカンドを用いて検討した。冠動脈には大動脈に比較して、α受容体が少なく【β_1】優位であり、又【H_1】も多い事が明らかになった。【◯!2】培養平滑筋細胞にQuin【II】を生理的にとりこませることに成功し、細胞内自由【Ca^(++)】の動態を1μ【M^2】の微小領域について連続的に測定する方法を開発した。現在、冠攣縮部細胞についてこの方法を応用する条件について検討している。
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