1.健康人では自己抗体の産生が制御されているが、その機序にサプレッサーT細胞の関与がある。そのようなT細胞のハイブリドーマを作り、自己抗体産生抑制サプレッサー因子の分離を目的とした。因子の分析のためにはin vitroでの自己抗体産生の実験系を確立する必要がある。慢性甲状腺炎患者リンパ球を培養しその産生する抗サイログロブリン抗体を鋭敏かつ正確に測定する方法として酵素イムノアッセイ法を確立した。従来プラック法で抗体産生細胞数を測定してきたが不安定な反応で解析に困難さがあったが、その点が改善され、以後の研究の進展の大きな基礎となった。健康人T細胞でサイログロブリンに反応するものを選択しそのハイブリドーマを作製してクローン化、上記の分析系を用いて目的とする因子を産生するクローンの選別が進行中である。一方、慢性甲状腺炎患者リンパ球からの抗サイログロブリン抗体、重症筋無力症患者リンパ球からの抗アセチルコリンレセプター抗体の産生がヘルパーT細胞に依存していることを明らかにしてきたのであるが、重症筋無力症患者胸腺T細胞を用いたハイブリドーマの中にそのような補助作用をもつものが存在することを証明した。 2.免疫グロブリンの産生には複数の細胞の関与があり、したがって免疫不全症における免疫グロブリン産生不全の成因は多様である。B細胞の機能を単独に評価するため、T細胞の産生するB細胞増殖因子B細胞分化因子を用いその点を検討、B細胞自身の分化能に欠陥のある患者とT細胞の異常が成因と考えられる場合とが明確に区別された。 3.免疫応答を制御するT細胞にはそのいくつかの亜群の関与があるが、モノクローナル抗体を用いた表面抗原の分析からそれらが同定される。T4・2H4抗原陽性T細胞、Leu11抗原陽性T細胞が抗体産生抑制機能に重要な関与をしていることを、それらを単離して行った実験から証明した。
|