1.骨髄移植による治療法の検討 この治療法の臨床応用のために以下の2つの基礎的検討を行ない満足すべき成績が得られた。 (1)大豆凝集素および羊赤血球ロゼット法処理による骨髄細胞の免疫学的特性: 骨髄移植のdonorにはHLA抗原の一致したalloreactivityのないdonorを得ることは極めて困難である。そこでReisnerの方法によりT細胞を極力除去し、alloreactivityを減弱させた骨髄細胞を得て移植を行うための基礎的検討としてこの分画の免疫学的特性を調べた。その結果、この方法により得られた分画は成T細胞が充分除去されたalloreactivityの極めて少ないものであることが確認された。 (2)サイクロスポリンA及びメソトレキセートのリンパ球混合反応に対する抑制効果: 骨髄移植時の重要な問題はGVH(移植片宿主反応)をいかに抑えるかにある。この為にサイクロスポリンAとメソトレキセートの使用が検討されている。In Vitroにおけるリンパ球混合反応はGVHの1つの指標となりうることからこの反応に対する薬剤の抑制効果を調べた。その結果、サイクロスポリンAもメソトレキセートもこの反応を抑制した。従って前者の入手が困難な現時点ではGVHの予防のために後者は充分適用される薬剤と考えられた。2.培養皮膚線維芽細胞による酵素補充療法の検討 MPS症IH/S型とGaucher病患者各1例1=HLA抗原の一致したdonorの培養皮膚線維芽細胞の移植を行なったところ、一過性の肝腫大の縮小が認められたが、その他の臨床所見に変化は認められなかった。 以上の成績から、今後遺伝性蓄積性代謝異常症の治療法の1つとして骨髄移植の臨床応用は充分考慮されるものと考えられるが、更に近年めざましい進歩をとゲている遺伝子組み換え技術を応用した治療法の検討も更に重要と考えられる。
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