目的:ヒトの睡眠の分類は1968年に公表された国際規準があり、これは睡眠を5つの段階に分類しており、子供と著明な脳器質性障害患者の睡眠を除いて広く用いられている。しかし、この国際規準は以下の弱点を有する。すなわち、第一にすべての段階の判定法が視察的に行われるので、客褻性にとぼしいこと、第二にとくに深い睡眠とされる段階3と4については、判定のばらつきが大きく、かつ睡眠脳波の個人差が著しく実際の睡眠行動の評価との間にかなりのずれが生ずること、第三に最近の増加した研究資料を効果的に整理分析するために、自動的・定量的な睡眠段階の分類法が不可欠なこと、以上三つの理由から新しい睡眠の機能的分類を企図した。 方法:健康な成年男子(18〜25才)21例、各例連続7夜の終夜睡眠記録、計147夜の実驗が施行され、紡錘波と低帯域波成分の積分の各々パターンをコンピューターにより同時描出させた。上記、紡錘波パターンのピーク値とその出現時点、積分パターンのピークの出現状況、紡錘波パターンの形態とわれわれの開発したOSA睡眠調査票(29項目の6選択肢を有する質問項目)による睡眠感との関係、新しい睡眠分類と体動などの関連を分析整理した。 結果:自動分析・自動処理した紡錘波パターンと積分パターンの両者から、新しく紡錘波増加期(E期)、紡錘波修飾期(M期)、レム睡眠期の3つに分類され、各々は1つの睡眠周期を構成し、これが数回くり返し出現して一晩の睡眠が終了することが判明した。上記方法に記した実驗と整理から、E期は主として国際規準による睡眠段階2によって占められ睡眠の后半にゆくに従い次第に延長する。細体動が多い。M期はその発現の初めに段階3と4が出現することが多く、紡錘波パターンは小さい変動をくり返す。睡眠の進行につれて短縮するが粗体動は多い。紡錘波パターンの非定型夜は睡眠感が明瞭に悪化した。
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