肺非小細胞癌に対する制癌剤化学療法、免疫療法等を組み合わせる集学的治療に関する検討を行い以下の研究成果を得た。1)手術時郭清した肺癌所属リンパ節リンパ球をIL2で培養することにより自家腫瘍細胞に対する強い細胞障害活性を誘導することを明らかにした。これらのin vitroで活性化した自家リンパ球を術後経静脈的投与を行い受動免疫療法の可能性につき検討したが、投与直後にみられる一過性の熱発を除いては明らかな副作用はみられなかった。投与リンパ球数及び臨床効果については現在検討中であるが、臨床応用可能ではないかと考えている。2)肺癌切除術後末梢リンパ球の自家腫瘍細胞並びに肺腺癌樹立細胞株(PC-3)、K562白血病細胞に対する細胞障害活性を術後経時的に検討した。術後1〜2週では扁平上皮癌では病期並びに根治度でともに有意の差はみられなかったが腺癌では病期の進行とともに、また根治度の低下とともに細胞障害活性は有意に低下した。この術後1〜2週の細胞障害活性値に比し、術後4〜5週においては治癒切除例では推計学的に有意に低下したが非治癒切除例では逆に上昇傾向を示した。このことはヒト肺癌においても隨伴免疫が存在している可能性を示唆しているものと考えられる。3)腺癌所属リンパ節リンパ球よりhybridomaを用いてヒト腺癌に特異性の高いモノクローナル抗体作成に成功した。このモノクローナル抗体による血清診断並びにRIをラベルしたtumor imaging等を考慮中である。4)制癌剤感受性テストを肺癌切除材料より腫瘍細胞を分離し、主として細胞の形態学的変化より、その有効性を検討中である。5)肺非小細胞癌に対するシスプラチン及びビンデシンによる化学療法の抗腫瘍性に関する検討ではPR以上の効果が約20%の症例に認められ、従来の方法より抗腫瘍性の高いことが確認された。
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