本研究では、高性能を有するプッシャープレート型人工心臓を使用して、心臓置換、循環維持及び制御に関する動物実験を行ない、心移植への橋渡しとしての人工心臓の一時使用実用化を検討すると同時に永久使用完全埋め込み式システムの開発研究の土台を作製することを目的とする。 体重60kgの日本人を対象に50-60kgの成山羊の胸腔内に入る用に設計したプッシャープレート型ポンプ(左1回拍出量は65cc、右50cc)で、心臓置換の実験を行なった。ポンプの埋め込みは、GOF麻酔で右第4肋間開胸、体外循環下心臓を切除し、流入流出コネクターを装着した後、先ず左の人工心臓を装着駆動し、続いて右のポンプを取りつけ駆動して、体外循環を終了した。術後、両心房圧、肺及び大動脈圧とホールセンサによるポンプ流量のモニタリングを連続的に行なった。また、血液中の酸素含有量のモニター及び静脈血酸素飽和度によるポンプ流量の自動制御を目標にポンプに反射光センサを取りつけ、動静脈血酸素飽和度を連続的に計測した。また、末梢循環評価の指標として、血液サンプリングを定期的に行ない、乳酸値の変動を見た。人工心臓の制御方法としては、静脈血の酸素飽和度を65%以上に維持すると同時に、血中乳酸値を最小限に維持するように、循環血液量及び末梢抵抗の調節を行ない、ポンプ流量を70ml/kg/min以上に維持した。現在までに、成山羊16頭で循環維持の実験を行なったが、血中乳酸値の上昇でも明らかなように末梢不全や肺機能の低下が問題で長期生存は、最高48時間であった。そこで長期の体外循環にも絶え得る生後3-4ヵ月の子牛を使用して実験を開始することを目的に、左90cc、右80ccのポンプを再設計し、研究を継続している。また、永久使用完全埋め込み型の人工心臓の開発研究として、モーター駆動システムの設計、FIT-TINGを行ない、現在ベンチテストを行なっている。
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