研究概要 |
悪性骨・軟部腫瘍に対する臨床的に有効な抗癌剤感受性試験として抗癌剤の核酸合成抑制効果をin vitroで判定する方法の開発が本研究の目的である。効率良く検査結果を得るための手段として、腫瘍組織をいったんヌードマウスに移植しておき、これを随時、組織培養下に移して感受性を検索するシステムを開発してきた。今年度はヒト骨肉腫について、このシステムの臨床応用の可能性を分析して以下の結果を得た。(1)ヒト骨肉腫12例について、我々の方法による感受性テストの結果を得た。ADM,BLM,MMC,ActD,MTX,5FU,AroC,VCRの感受性を検索した。個々の症例の薬剤感受性は異なるものの、一般にADM,MMCに高感受性を示した。(2)標識化合物として【^3H】-TdR,【^3H】-UdR,【^(14)C】-formateを用いて、抗癌剤による核酸合成抑制効果を比較した。【^3H】-UdRの細胞内取り込み抑制が最も安定性のある結果を示し、昨年の横紋筋肉腫で得られた結果と一致していた。(3)12例の骨肉腫について、薬剤感受性の結果と臨床効果との相関をみるために、個々の患者のプロトコールを検討した。テストで高感受性を示した薬剤は、臨床上でも転移巣発現の予防と増殖の抑制に有効に働いていると思われた。(4)現在ヌードマウス背部皮下への継代移植を続けている骨肉腫の1例は、17代目継代移植以降にほぼ100%の頻度で肺転移巣を形成するようになった。肉眼的に肺転移巣が出現する前に皮下腫瘍を摘出することによって、ヒトの骨肉腫モデルを作成した。テストで高感受性を示した薬剤が、肺転移巣の発現と発育に対して抑制効果を示した。(5)1例の骨肉腫は、原発腫瘍と、原発腫瘍の根治手術後、早期に発現した肺転移巣から同時にヌードマウス移植株を得た。両者の移植腫瘍の染色体構成は同一で、modeは43、10個のmarkerを有していた。原発および転移腫瘍ともに各抗癌剤に低感受性を示し、臨床経過と一致していた。
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