臨床的に有効な制癌剤感受性試験として、抗癌剤の核酸合成抑制効果をin vitroで判定する方法がある。効率良く検査結果を得るための手段として、腫瘍組織をいったんヌードマウスに移植しておき、随時、組織培養下に移して感受性を検索するシステムを、ヒト横紋筋肉腫と骨肉腫を用いて開発してきた。3年間の研究の成果は次のとうりである。 (1)ヒト横紋筋肉腫7例、ヒト骨肉腫12例のうち、70%以上に何等かの結果を得ることができた。 (2)ADM、BLM、MMC、ACT-D、MTX、5FU、AraC、VCR、CDDP、CMPに対する感受性を検索した。横紋筋肉腫にはVCR、MMC、ADM、BLMが、骨肉腫にはMTX、ADM、MMC、CPM、ACT-Dが高感受性を示した。 (3)標謝化合物として【^3H】-TdR、【^3H】-UdR、【^(14)C】-formateを用いて、抗癌剤による核酸合成抑制効果を比較した。薬剤の高濃度領域では【^3H】-UdRが核酸合成に最も鋭敏に反応を示していた。 (4)一定濃度の抗癌剤処理の場合に、核酸合成抑制率と生存細胞は良く相関していた。抑制率が75%を示す薬剤濃度で処理を行った場合には、腫瘍細胞の再増殖はほぼ抑制された。 (5)in vitroでの有効薬剤濃度をヒト横紋筋肉腫と骨肉腫が移植されたヌードマウスに投与した。横紋筋肉腫では移植腫瘍の増殖抑制効果、骨肉腫では肺転移抑制効果が認められた。 (6)同一症例の骨肉腫について2カ月間に2〜7回のテストを行ない、再現性の有無を判定した。8例の骨肉腫中、70%以上の再現性を示したのは6例であった。またMMC、CPM、ACT-D、ADM、MTXでは70%の再現性を示していた。 (7)核酸合成抑制法のtrue positive rateは50%、true negative rateは66.6%であった。Human Tumor Clonogenic Assay法では、前者が25%、後者は60%であった。核酸合成抑制法で感受性なしと判定した場合には、臨床でも無効である確立が高いことを示していた。
|