研究概要 |
本研究はイソフルレン及びセボフルレンの新しい吸入麻酔薬と、従来から使用されている吸入麻酔薬の化学的な安定性および生体内代謝について検討したものである。 (1)2年間にわたる紫外線の照射実験をおこなったが、イソフルレン,セボフルレン,ハロセン,メトキシフルレン,エンフルレンともに安定であり、変化はガスクロマトグラフィーでの検出限界以下であった。 (2)ハロセンの代謝産物トリフルオロ酢酸の排泄は(尿中および胆汁中)吸入ハロセン濃度に比例しないが、ウサギの呼気に排泄される嫌気的代謝産物は吸入濃度に比例した。 (3)イソフルレンの代謝産物トリフルオロ酢酸を初めてイオンクロマトグラフィーで定量し、その尿中および胆汁中への排泄が吸入イソフルレン濃度に比例することを明らかにした。 (4)イソフルレンの代謝産物であるトリフルオロ酢酸,有機弗素,および無機弗素が従来報告されているより多くヒトの生体内で産生されることを血中および尿中の排泄から証明し、有機弗素のほとんどがトリフルオロ酢酸であること、無機弗素の尿中への排泄は吸入イソフルレン濃度に比例するが、有機弗素は比例しないこと等、薬動力学的に興味ある事実を明らかにした。 (5)セボフルレンをヒトに吸入させ、無機弗素の血中半減期が25時間、尿中半減期が43時間であることを明らかにした。 (6)セボフルレンを吸入させたラットおよびヒトの胆汁中,血中,尿中の主な有機弗素代謝産物はヘキサフルオロイソプロパノールのグルクロン酸抱合体であることを明らかにした。 (7)セボフルレンのソーダーライムによる分解物として、セボフルレンの脱HF化体,そのメチル化体,更にそれが脱HF化したもの3種類、合計5種類の分解物を同定した。モデル肺を用いた閉鎖回路での主な分解物は、セボフルレンの脱HF化体と、そのメチル化体の2種類であり、他はほとんど検出されなかった。
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