研究概要 |
STD流行に対する関心は医学界においても次第に高まっており、STDの流行の公衆衛生学的意義が重要視される様になって来ている。しかし、本邦では今まであまり信頼のおけるSTDの疫学的統計資料が作られていなかった。そこで我々は比較的全国的規模の泌尿器科医の協力を得て、STD症例の統計的検討を行っており、現在その統計集計が進行中である。一応昨年1〜6月までの集計では、STD症例は外来患者18万5千名の5%(9500例)にみられている。そして淋菌感染症を100とすると、非淋菌性尿道・性器感染症が166%,尖型コンジローマ29.8%,性器ヘルペス17.1%,初期梅毒9.1%,軟性下疳0.1%また毛虱10.2%,疥癬11.9%という比率になっている。アメリカの比率では、非淋菌性感染150,尖型コンジローマ50,性器ヘルペス25で、非淋菌性はアメリカとほぼ同じであるが、尖型コンジローマ,性器ヘルペスがまだ少し低率であることがわかる。しかし、その両者も最近急激に症例数が増数しており、アメリカ並の比率になることも近々のことと考えられる。淋菌におけるβ-lactamase産生能は、札幌の調査では1980年2%,81年6.4%,82年10.5%,83年9.5%,84年17.5%85年18.7%となり、ここ2年は20%に近づきつつあることがわかる。 また。Chlamydia tiachomatis分離率は、一般妊産婦で6.9%(21/304)であり、ことに10才代を中心とした人工流産施行例では12.1%(12/99)とかなり高率にみられており、その潜行性流行が著しいことが示唆されている。なお淋菌性男子尿道炎の24.2%,同子宮頸管炎の34.8%にChlamydia感染の合併のあることが証明されている。 今後さらに各種STDの流行の程度を色々な角度から調査し、本研究をまとめてゆきたい。
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