1.付属管腔レベルにおける発音器官の動態の定量的解析とその臨床的応用に関する研究 下顎動態の自動解析を施行し、日本語母音は顎の開きの程度から2群に大別されると推論した。古運動の解析には非侵襲型画像記録方式として、超音波断層法を用いた。研究結果として、舌の上下方向の変位の時間パタンは、ホルマント遷移パタンとよく対応することが示された。小脳変性症では運動の範囲や速度の非恒常性を定量的に把握することができた。筋萎縮性側索硬化症例では、運動速度の低下と運動範囲の狭小化が認められ、言語所見とよく対応する知見と考えられた。また舌形成例では、皮弁の受動的な動きが代償構音の成立に関与していると推論された。さらに構音障害者の訓練装置として実時間表示による超音波断層像提示方式の利用が検討され、その有用性が指摘された。 2.喉頭レベルにおける発音器官の動態の定量的解析とその臨床的応用に関する研究 起声時には声帯長が徐々に減少し、発声中にはほぼ一定の値を保ち、吸気への移行に際し声帯長の増加をみることが判明した。喉頭側視鏡およびファイバースコープと半導体イメージセンサを組合わせて高フレームレートの信号を送りモニタ画面に連続表示するという方式を開発し、声門閉鎖区間と開大区間ではホルマント周波数に大差はないが、バンド幅は、閉鎖区間の方が小さいことを確認した。声門の閉鎖期と開大期とでは声門縁の時間的変化のパタンに差があることも指摘された。解析を気息性嗄声を呈する例について行ったところ、声帯振動周期中に持続的声門開放像が認められ、音源の性質としては、高周波成分の減弱を認めた。これは本システムが病的例の解析に有用であることを支持するものと考えられた。
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