ステレオクロノスコピー(経時的立体観察)をステレオクロノスコピー用トプコン眼底カメラTRC-SCを用いて行う場合、アラインメントの基本は視神経乳頭及び角膜反射の位置ずれの有無にある。被検眼の視度に応じて角膜反射間の距離が変化するため、これまでのモニターパターンを改良し、モニター上で水平方向に5mm間隔で乳頭視標の両側に各々6本の線、上下方向に2.9mm間隔で3本の線の入ったスケールにして、各被検眼の視度に応じたアライメントの調整を容易にし、かつアライメントの許容範囲を示すようにした。このスケールにより猿眼のステレオクロノスコピーも可能となった。アライメントの不一致と立体効果との関係について79組の写真で検討すると、角膜指標2.8mm、乳頭指標2.4mm以内の位置ずれでは9.5%に立体効果がみられた。 正常人50名の2年間の視神経乳頭陥凹(陥凹)の変化を本法で追究中であるが、現時点では陥凹に変化は認められない。 高眼圧症、緑内障の2年間の変化を同様に追究中であるが、眼圧コントロール不良群に陥凹の変化がみられる例が昨年度と同様認められる他、緑内障進行例で眼圧が21mmHg以下にコントロールされ、視野検査、同時立体眼底写真では変化がみられない症例で、本法により陥凹の一部分に変化が発見された。 猿眼における実験緑内障では眼圧を22〜40mmHgに上昇させた場合、ステレオクロノスコピーでは眼圧上昇の初期より陥凹の拡大が認められた。これは組織学的所見すなわち乳頭篩板の後方への圧迫と、神経線維の消耗に一致していた。 以上のことよりステレオクロノスコピーによれば緑内障の極く初期から進行した症例の陥凹の変化を鋭敏にとらえることが可能であり、緑内障の進行の有無をみるのに優れた方法である。
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