研究概要 |
ステレオクロノスコピー(経時的立体観察)を行う際に最も重要な点は撮影時のアライメントが常に一定であることが再確認された。この為にトプコン眼底カメラTRC-SCのモニターパターンを改良し、各被検眼の視度におうじてアライメントを行えるようにした。更にこのパターンと角膜反射光をフィルム上に眼底像とスーパーインポーズするようにした。これらによりアライメントの状態をより簡単に把握でき、ステレオクロノスコピーがより正確に行えるようになった。視神経乳頭陥凹(陥凹)の変化をステレオクロノスコピーで観察した場合には、観察期間内に変化した部位が立体的に見えると従来報告されていたが、今回の研究の結果、ステレオクロノスコピーにおける真の陥凹の変化による立体効果はアライメントの位置ずれによる立体効果とは全く異なることがわかった。すなわち陥凹全体が拡大した場合、陥凹の半分が浮き上り、他半分が陥んでみえる。陥凹が上下方向にのみ拡大した場合、写真を90゜回転すると同様の所見が得られる。陥凹の一部のみ変化した場合にはその部位のみが浮き上るか陥んでみえる。このような立体効果は真の陥凹の変化により生じた視差差によることがわかった。 正常人50名の3年間の観察では陥凹に変化がみられず、一年に6000本程度の神経線維の抜けが生ずるといわれているが、この程度の期間では陥凹に変化は生じないと考えられた。緑内障,高眼圧症においては陥凹の変化は眼圧のレベルに関係していることがわかったが、眼圧が正常にコントロールされている例にも陥凹の拡大が認められた例があり、これは視野異常の進行に先行していた。ステレオクロノスコピーは緑内障の経過観察の重要な手段であるといえる。猿眼実験緑内障では陥凹の拡大,深度の増大がステレオクロノスコピーで認められ、組織学的検索により、乳頭篩板の層状構造の破壊と後方への圧迫によることがわかった。
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