生物学的石灰化機構を解明する目的で、今年度は昨年度に引き続き、急速凍結置換法による観察を行い、さらに、ラット胎仔頭頂骨を用いた細胞化学的研究、鳥類腱の石灰化、鉛トレーサーによる象牙質の添加的石灰化、酢酸鉛による異所性石灰化機構について検索を行った。 1)液体ヘリウムによる急速凍結置換法を用いた研究:基質小胞性石灰化に引き続いて起るコラーゲン性石灰化は、軟骨においては近接するコラーゲン細線維のオスミウム好性化が引き金になり、また、骨組織においても石灰化した基質小胞に密接して存在するコラーゲン細線維の一部変性が生じてそこに石灰化が波及する可能性が示された。 2)ニワトリの腱の骨化に伴う石灰化機構の研究:加令的に骨化する腱を用いてその石灰化過程を観察した。その結果、石灰化開始機構は、線維軟骨細胞の変性に基づく基質小胞により さらにコラーゲン細線維への石灰化の移行は、石灰化した基質小胞の密接部位から起ることが明らかにされた。なお、腱コラーゲン線維の石灰化には、Fitton-Jackionの示した微小アパタイト粒子は認められなかった。 3)鉛とれーサー実験:酢酸鉛は静注後10分後で 象牙質の基質小胞ならびに添加的石灰化部位へ沈着するが、コラーゲン細線維への移行部では、石灰化基質小胞に接っして特異的に鉛が沈着し、細線維に沿って石灰化が進行する状態が形態的に把えられた。 4)酢酸鉛による異所性石灰化実験:ラット皮下に酢酸鉛を注入すると1〜3時間で、異所性石灰化が起るが、最初の鉛沈着部位は一部膨化したコラーゲン線維で そこを中心に結晶化が波及することが明らかにされた。 5)ラット胎仔頭蓋骨の骨形成に関する細胞化学的研究:頭頂骨の骨形成部位における骨芽細胞は強いアルカリホスファターゼ活性を細胞膜全体に示し、基質小胞はその時期に形成され、石灰化が起る。
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