1.接着性レジンと被着体の表面処理 被着体の表面性状は接着の長期安定性に大きな影響を及ぼす。エナメル質の場合には、60%リン酸や10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液で処理を施すと、表面に微細な凹凸構造が生じて接着が補強され、象牙質に対しては10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液(または塩化第二銅溶液)が洗浄効果や化学的相互作用を発揮し、極めて有効であることが判明した。また合金や陶材に対しては、表面の粗造化、機能性モノマーの吸着などにより接着の耐久性が向上した。 2.各種の機能性モノマーの導入 接着を増強させる機能性モノマーとして、4-METAやフェニルPがあり、これらの構造上の特徴を活かして新しいモノマーを合成した。酸無水物系のMBPAやチオフェノール系のMPMAを合金に対する機能性モノマーとして合成した。陶材に対してはシラン系のKBM503を導入し、これらのモノマを含む新しい接着性レジンを試作し、使用方法や接着挙動を解析した。 3.試作接着性レジンシステムの評価 MBPAモノマーをMMAに添加したMMA-TBBO系レジンは金合金タイプ【IV】、金銀パラジウム合金、ニッケル-クロム合金に対して優れた接着安定性を示し、またMPMAを接着に先立って合金表面に吸着させておくと、接着強さが著しく向上することが判明した。MPMAの効果は、パラジウムや金銀パラジウム合金に対して特異的であり、MPMAとパラジウムが化学的に結合していることが、ESCA分析により確認された。陶材の表面にKBM503シランカップリング剤を塗布して加熱処理を施した後に接着剤を応用すると、接着の耐水性が改善されることが認められ、さらにこれらの接着性レジンシステムを臨床において検討し、良好な結果が得られた。
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