研究概要 |
唾液腺は手術後の唾液瘻、粘液貯留嚢胞形成などの不快な症状を呈することもあるため主として全摘出術が行われている。しかし、腺体の一部保存が可能な症例もあり、これらの治療法の1つとして、切断面の封鎖効果を有する【CO_2】レーザーの応用が考えられる。 本実験では【CO_2】レーザーによりラット顎下腺を部分切除し、その後の回復過程を病理組織学的な観察、透明標本による血管系の観察、さらに99mTc【O(^~_4)】による機能検査を行い比較検討し以下の結論を得た。 1)病理組織所見:部分切除直後から2日後にわたり、著明な熱変性領域が認められ、同部は蜂窩様構造を主体とした第一層と、組織の凝固、壊死を主体とした第二層に識別して観察された。また、同時期には円形細胞浸潤、間質水腫などの炎症症状が著明に認められた。切除7日後以降、炎症症状は減少傾向を示し、切除21日後には切断面は不明となりほぼ正常な所見を呈した。 2)血管造影所見:部分切除直後から2日後にわたり幅約1mmの血行阻害領域を認め、切断面の血行は完全に遮断されていた。その後、健常組織境界部では血管新生が盛んとなり、切除7日後には血管叢が形成された。切除21日後には血行阻害領域は不明となり、切断面の血管系は正常状態に回復した。 3)顎下腺機能検査:99mTc【O(^~_4)】uptake test,99mTc【O(^~_4)】clearance test、いずれも部分切除直後から4日後にわたり、その摂取率は30〜40%の増加を示した。この摂取率の上昇は腺体内血管の一時的拡張などによるものと考えられた。さらに、刺激分泌係数より切除直後は唾液分泌機能が低下したが、切除7日後以降は正常機能に復していた。
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