研究概要 |
我々が新しくブタ脊髄から単離したニューロキニンA,B(NeuroKininA,B:以下NKA,NKBと略)は、化学的ならびに生理学・薬理学的性質が従来から神経伝達性ペプチドとして知られているタヒキニン群のひとつサブスタンスP(SubstanceP:以下SPと略)によく似ていることから、哺乳動物の第二、第三のタヒキニンペプチドとして注目を集めている。本研究においてはNKAならびにNKBの様々なアミノ酸置換アナローグを化学的に合成し、三次構造を含む化学構造と生理活性の相関々係を検討し、その結果に基づいて活性発現に関る"活性型コンホメーション"及び受容体のサブタイプの性状に言及し、今後のこれら神経ペプチドのレセプターによる特異的分子認識機構や真の生理機能を研究するための有益な知見を集積し得たと考える。従来から哺乳動物のタヒキニン群ペプチドに対する受容体は、そのペプチドに対する感受性の違いによりSP-P型ならびにSP-E型の二種のサブタイプがあり、前者はSPやフイザラミン、後者はエレドイシンやカツシニンを各々アゴニストとすると考えられて来た。しかしこれらのうちSP以外のものは哺乳動物に由来するものではなく、哺乳動物由来のSP-E特異性タヒキニンの存在が早くから予想されて来たが、我々の構造活性相関の研究NKAとNKBが明らかにSPとは異なる挙動を示していること、さらにC末端から4番目が脂肪族アミノ酸(Val)で7番目が酸牲アミノ酸(ASP)-これがSP-E特異的-、前者がカルボキサミド系のアミノ酸(GIN)で後者が芳香族アミノ酸(Phe)-これがSP-P特異的-の組合せが、受容体識別に重要な意味を持つことを解明した。また併せてNKA,NKBのN端部の構造上の差異がその薬理活性に異なる効果を示し、NKAとNKBとは異なる受容体に作用していることを示唆する結果が得られ、哺乳動物のタヒキニン系ないしニューロキニン系ペプチドの受容体には三種ある可能性が示された。
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