昨年度に引続き、川崎病免疫病態解明のために、急性期血清中の免疫抑制因子の免疫化学的同定と免疫診断法開発のために必須な基礎実験を行った。 1.急性期免疫抑制因子の同定:急性期の死亡例から採取した200mlの血清を80%ammonium sulfateで濃縮後、イオン交換クロマトグラフィで分画し、NaCl0.1-0.2で遊出する分画(Fr.【III】)にConA刺激正常リンパ球増殖反応抑制活性物質を含むことをみい出し、この分画をさらに、 Seohadex G-100ゲル濾過で分画すると、分子量95KD以上の高分子分画に活性物質を同定した。さらにこの分画をHPLCで分画し、原血清の2000倍の活性を持つ140KDの蛋白活性物質を分離した。次に、この物質に対するマウス単クローン抗体(MoAb)を作製し、140KD物質に結合しその活性を阻害する3つのクローンを得た。このうち2つのクローンは、活性物質上の同一の抗原決定基を認識し、残りの1つはちがった決定基に対応する。この単クローン抗体を用いて55例の急性期血清を調べ、43例(80%)に140KD蛋白を同定した。 2.免疫診断法の開発:急性期にNGNA型シアル酸を主としたH-D抗原に対応する抗体産生のみとめられることは、前年度に報告した。しかし、抗体のクラスが主にIgMであるためにヒト由来のIgG H-D抗体を検索し、慢性肝炎(28%)及びメラノーマ(43%)血清中にみい出した。患者体液中のH-D抗原検出のためにEIA法を用い、鶏由来のH-D抗体とヒト由来のH-D抗体によるサンドウィッチ法を確立した。この方法は予備実験で精製H-D抗原を100ng/mlレベルで検出可能である。 免疫複合体に対する特異的検出法開発のために、ヒトIgGアグレゲートで免疫した兎の脾細胞を【SV_(40)】Ori~DNAの移入により、immortalizationに成功し、3ヶ月に亘りIgG抗体を10μg/ml分泌する細胞群を得た。現在クローニング中である。
|