インフルエンザウイルスの酸性条件下での融合活性の発現に基づいて、我々はこのウイルスの新しい細胞内侵入の機構を提出してきた。本研究では、インフルエンザウイルスの細胞内でのアンコーテイング(脱被履)の場の同定およびウイルスの融合能をになうヘマグルチニン分子の酸性条件下での構造変化について主に調べた。 1 蛍光顕微鏡を用いた細胞内でのインフルエンザウイルスの挙動の解析。 (1).ウイルス周辺のpHの測定 ウイルスあるいは単離したヘマグルチニンをフルオレッセインイソチオシアナート(FITC)でラベルし、MOCK培養細胞に取り込ませた。これらの周辺のpHを、異なる二波長で励起した時の蛍光強度の比から見積もった。 (2).ウイルスのリソソームへの輸送の測定、新しくFITCニリン酸塩を合成し、これがリソソーム酵素で脱リン酸されると蛍光強度が20倍も増加することを利用して、ウイルス粒子のリソソームへの輸送を測定した。 (3).超高感度TVカメラおよびイメージ処理システム装置の作成、本装置を蛍光顕微鏡にセットし、FITCでラベルしたヘマグルチニン等を細胞に取り込ませ、細胞内小胞のpHを測定した。また小胞のサルタトリー運動やリソソーム領域への集合などを解析した。 これらの結果とウイルスの増殖の結果とを合わせて、インフルエンザウイルスはエンドソームでアンコーティングすると結論した。 2.インフルエンザウイルスヘマグルチニンの酸性下での構造変化 ヘマグルチニンに含まれるトリプトファン残基の蛍光を測定し、酸性ではヘマグルチニンの構造変化がおこり、ガングリオシドを含むリポソームが存在する時は、脂質二分子層内部にペプチドの一部が挿入されることを示した。
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