本研究は、大腸菌の温度感受性突然変異を解析することによって、リボゾームの構造と機能を明らかにすることを目的とする。このために多数の温度感受性突然変異株を分離し、遺伝学的および生化学的解析を行なった。その結果、リボゾーム蛋白質S5の遺伝子(rpsE)にIS1が挿入された温度感受性突然変異株、および、リボゾーム蛋白質S4の遺伝子(rpsD)に起った部分的なくり返しを生む突然変異が温度感受性の原因となっていること、そして、これは恐らくこれらの遺伝子を含むポリシストロンックmRNAの翻訳が正しく継続されないためであろうということ、が判明した。 また、リボゾーム蛋白質S6、S18およびL9を含む遺伝子群の塩基配列を決定し、この中に一つのopen reading frame (ORF)が存在すること、このORFは実際に予想される11.4kdの蛋白質の生産に関与していること、をトランスポゾンγδの挿入実験で確かめた。さらに、リボゾーム蛋白質L32の遺伝子であるrpmFを含む染色体部分の塩基配列を決定し、rpmFが30kdの大きさの蛋白質をコードする遺伝子の下流にあって、この遺伝子と共に1個の転写単位(オペロン)を形成していることを見出した。この30kdの蛋白質の機能は現在のところ不明である。これらの遺伝子の解析に加えて、リボゾーム蛋白質S5とS18のN末端のアセチル化に関与する遺伝子をクローンし、その塩基配列とオペロン構造を決定した。その結果、両者の遺伝子間には全く相同性がないこと、さらに、独立にクローンしたリボゾーム蛋白質L12のN末端のアセチル化に関与する遺伝子との間にも相同性のないこと、をサザンブロット法により確かめた。以上述べたように、本研究により、大腸菌のリボゾーム蛋白質の遺伝子構造の詳細を明らかにすることができた。
|