ニューモシスチス・カリニ(以下Pcと略)肺炎の免疫学的診断は発症の背景に免疫能低下という条件があるため抗体の検出は困難であり、血中循環抗原を証明する方法を行わなければならない。しかしその方法及び判定基準は未だ確立されておらないので、実験動物血清及び患者血清を用いて比較検討を行い、現在までに以下の如き成績を得た。 1.IgG分画標識としては過沃素酸法、Fab′分画標識としてはマレイミド法を行い、実験ラット血清を用いてサンドウィッチ法による酵素抗体法(ELISA)を実施した結果、過沃素酸法ではプレートのコーティング蛋白量が128μg/ml、被検血清4倍稀釈の条件下で最も良い成績が得られ、マレイミド法では16μg/ml、10倍稀釈血清の条件下で対照血清との間に有意差が認められた。 2.患者血清を用いての検討結果、上記の条件では正常血清中の約30%が陽性を示し、感度は高いが不顕性感染者も陽性を呈することが判明した。 3.Pc粗抗原をセファクリーリS200及びポリアクリルアミドゲルで精製して得られた抗原を用いて感作血清を作製し、オクテロニー法による検討を行ったところ、Pc発症ラット血清の約20%が陰性であった。 4.患者血清382例552検体について精査したところ、採血後1週以内の血清では臨床所見と一致した成績が得られているが、1ヶ月以上凍結保存した血清ではすべて陰性を呈し活性が失われていた。 5.Pc抗原の沃素化が不可能であるためラジオイムノアツセイは出来ず、又モノクローナル抗体作成も未だ成功していない。 以上、Pc肺炎の診断法としては現時点では臨床所見と平行した成績の得られているオクテロニー法が最も良いという結果である。
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