研究概要 |
1.ここ10年半導体化合物どうしのエピタキシャル超格子の育成が原子的尺度で精密にななされ、高移動度トランジスタなど多くの新素子が研究されているが金属超格子膜については構造と磁性についての研究以外あまり進展していない。本研究はノンエピタキシャルではあるが金属(又は半金属)超格子系の新物性を開拓しようとして始めたものである。超高眞空蒸着装置は一式【10^8】円を要するものであるが、われわれは自作部分を多くして、その数分の1で装置一式を設置した。 2.研究期間中に予備実験を含めて取扱った金属超格子系は、Ag-Bi,Ag-Au,Yb-Sb,Bi-Sbであり、Au-AlなどAuを一組成としたものは予定しながら、液体窒素シュラウドの不調のためまだ行っていない。Ag-Bi,Ag-Auにおいては周期λに関し、50【A!゜】<λ<l(バルク平均自由行路)の範囲の成膜につき比抵抗ρが1/λに比例するという境界散乱が立証証された。 3.Yb-Sb超格子膜は、Ybが2価金属で、かつほとんど半金属といってよいキャリヤーの少なさをもっており、Sbと組んで興味ある物性を示すのではないかと想像した。1:1の積層比のもので積層周期λを10〜1000【A!゜】と広範囲に変えたところ、λ【_!〜】100【A!゜】で比抵抗は不連続的に薄い周期側で2桁近くはね上り、厚い周期側の金属性に対比的に半導体的温度係数を示した。しかしそれらにつきlogρ対1/Tの直線性よりlogρ対1/(【T^(1/4)】)の直線性の良さから3次元性のアンダーソン局在という超格子金属膜として新物性をえた。 4.Bi-Sbはバルクで全域固溶系で4〜40Sb%で半導体となることが確立されているが、超格子膜でどのようになるかが探究された。やはり4〜48%Sbで微少ギャップ(max.13meV)を示めすことが見出された。また10%Sb組成で周期λとギャップの間に極大・極少をふくむ依存性が見出された。3,4の金属・非金属転移は新物性である。
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